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第二章 天女、潜入 + 8 +

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-24 12:51:13

 そんな実子を母は仕方がないと諦めていたそぶりがある。夫を奪い合う立場にある愛妾と正妻が仲良くすることなどできっこないのだと。

 本宅と別邸と住む場所は隔てられていたけれど、同じ敷地内にあるから完全に顔を合わせないことは不可能だった。それに、桜桃が生まれてからも、実子だけは別邸へ足を運ばなかった。彼女の息子の柚葉はこっそり遊びに来てくれたけど……

「もしかしたら、実子さまがそれを他のひとに漏らしたってこと?」

 自分の主人が囲っている愛人はこの国を揺るがす最強の神の血を持つ危険な女だったと。

「その可能性が一番高い。セツさまが亡くなって樹太朗が海外へ出奔してからも、嬢ちゃんは隔絶されたままの生活だったろう? 嬢ちゃんが別邸で暮されたのは樹太朗が大切にしているからって正当な理由があったけど、妻からすれば愛妾の娘の特別扱いすら憎しみの対象にしかならないわけさ。幽閉だ」

 実子の娘と息子はそんな母親を疑問に思いながらも桜桃の存在を受け入れていた。

 梅子は異母妹の桜桃を身分の低い愛妾が生んだ苔桃などと呼んで貶しはしていたが、実子のような暗い憎しみや殺意は持っていなかった。柚葉もまた、桜桃が愛妾の娘ゆえに幽閉同然の生活を強いられているとばかり思っていたのだから、ふたりはこの襲撃とは無関係なのだろう。そうだと思いたい、と桜桃は心の中で祈りながら、確認をするように口をひらく。

「じゃあ、実子さまが黒幕で、お父さまが行方知れずになのをいいことに、何者かと共謀したの……?」

「それはまだわからない、けど」

 言葉を切って、湾は苦笑する。

「殺されるのも捕まえられるのも利用されるのもイヤだろ?」

「うん」

 神皇帝が持つ血よりも尊く、神を宿らせ不思議なちからを持つという天神の娘。桜桃にその巫女姫のちからがなくても、その血を求める愚かな人間がいる限り、彼女はその運命を受け入れ、戦わなければならない。

「セツさまは、それを知っていたから樹太朗に、嬢ちゃんを敷地の外へ出してはいけないと言葉を遺して亡くなられたんだ」

 ぜんぶ、いなくなった樹太朗の受け売りだけどね、と笑いながら湾は

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